この時代の時計のつけ方として、女性たちに支持されていたのが「シャトレーヌ」(写真5)です。時計を、直接ウエストから鎖やリボンでさげるのではなく、金属の板と、くさりの先にフックがついた用具を使い、そこに時計を引っ掛けて身に着ける装身具です。
マリー・アントワネットがブレゲの時計をシャトレーヌに付けて使用したかは不明ですが、このシャトレーヌ、優雅で、豪華でまさしくロココといった感じですね。語源からするとシャトレーヌ=「城主の妻」という意味で、城の管理を任された妻がいくつもの鍵をさげていたことから付けられています。また、時計以外にも、時計のぜんまいを巻く鍵、香水ビン、はさみ、印章なども一緒にさげていました。
このロココも、1789年のフランス革命を境に変わっていきます。現代に比べるとまだ装飾的ですが、ブレゲが手本を示したようにシンプルなデザインへ移行していきます。
時計の作り手のブレゲ、そしてそれを愛用したマリー・アントワネット、2人とも確かに歴史の中で輝いています。 |
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写真4 |
「No.160」ミニッツ・リピーター、永久カレンダー、パワーリザーブ・インジゲーター、イクエーション、自動巻きでケースはゴールド、文字盤はロック・クリスタルなので構造が見える。残念ながら1983年当時
の所有者であったイスラエルの美術館から盗まれたきり行方不明となっている。 |
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写真5 |
携帯時計がつりさげられたシャトレーヌ。全長19cmあり、揃いのエナメル画で装飾されている。ロココ時代の全盛期には、ウエスト左右から2つもさげることがあった。 |
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