第90号 ウルリッヒ・ライトホーファー(通称ウリ)T
2011年9月、オランダのジュエリー作家、ウルリッヒ・ライトホーファー氏(通称ウリ)が、「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ大阪校」でワークショップをしてくれた。
今回はその彼の作品を紹介したい。
まず、写真1だ(写真は拡大して記事と合わせて読んで下さい)。桜の木を削って白く塗り、リングの部分と髪の部分は金箔を使った木彫りの指輪だ。私たちの常識では、指輪の材料に木を使うなんて考えられない。しかし、彼はそんなことは気にしない。彼は木が好きなのだ。それに首をかしげた顔の表情がよい。白と金箔のコントラストもユニークだ。この指輪は立てて置くことができる。写真も平面で立てて撮っている。
写真2の指輪にいこう。木の根を削っているように見えるが、リングの部分は鹿の角だ。そこに、橙色透明のファイヤーオパールが留めてある。しかも石をよく見るとハート型の左上は欠けている。その欠けた部分の木枠の角には金箔が貼ってある(写真3)。なおよく見ると、このオパールは内部にヒビがいっぱい入っている。もしこの石が欠けてなく割れもなかったら、かなり高価な石となってしまう。多分彼は初めからこの欠けた石を買ってこの指輪をつくったように思う。
そして最後に、この石の留め方を見て欲しい。実際の釘を使っているのだ(写真3石の両側)。もちろん、それだけだと外れてしまうので、石は接着剤で留めている。釘もよく見ると接着剤を使っている。彼のジュエリーは石留めに実際の釘を使っていることが多い。もちろん釘はデコレーションで石は接着剤で留めている。割れたファイヤーオパール、釘留め、そして鹿の角がこの指輪の特長だ。そして指が入る部分は金箔が貼ってある。
宝石店にあるジュエリーを専門につくっている人にとっては、これは子供の遊びと写ってしまうかもしれない。しかし、この指輪を見た一人のジュエリーデザイナーは、「とても新鮮で目が洗われる。それほど私たちは商品的ジュエリーの決まり事にとらわれている」と言った。
ウルリッヒ・ライトホーファー氏
<写真1>
<写真2>
<写真3>
さて、こういう作品をつくる彼(私たちは「ウリ」と呼んでいる)はどんな人物なのか、こんなエピソードがある。
実は、ウリは2004年にも来校している。その時は学生としてだった。例によって海外の学生は日本の学生宅にホームステイするのだが、たまたまその家で障子張りをしていたらとても興味をもち、自分にもやらせて欲しいと頼み、長い時間をかけて家人より上手に仕上げてしまった。
11/9/30
(写真をクリックして拡大してみてください。)
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