聖武天皇が亡くなった後、光明皇后が天皇遺愛の品々を正倉院(写真2、建物を見るだけでもすばらしい。一度見に行くことをお勧めする)に納めた品々だ。なぜ価値があるかといえば、これらの品々はペルシャや中国、唐の時代のいわゆる舶来品が多いのだが、現在では中近東や中国では見つけられないものだからだ。歴史の中の数多くの戦乱の中で、ほとんど失われてしまっていて、残っているのはこの正倉院の物だけという品が多い。また、その工芸的な美しさや技術の高さでも現在再現するのが難しいといわれている。五弦の琵琶(写真3)などはその良い例で、毎年秋に行われる正倉院展は人気が高く、朝から長蛇の列ができる。
いわゆる天平の華といわれる時代なのだが、反面政治的には不安定なもろい時代でもあったのだ。宮廷内は天皇家と貴族の藤原氏との勢力争いであり、政治も仏教しか頼るものがなく、僧が政治に大きく影響した時代とも言える。
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