どうやら良寛さんにとって、貧しさをつきぬけて、住居や食べ物がないという物質的不足の先にある、全てを捨て去った後の何事にもとらわれない自由さ、心身解脱のことを言っているみたいだ。
そんな良寛さんが最後の花を咲かせたのは、七十歳の時だった。貞心尼という三十歳の美貌のお弟子さんができたのだ。二人とも歌人だったので、その恋心の歌が現在も数多く残り、今でも人の心を打っている。また、この貞心尼は良寛さんを最期まで看取り、没後も良寛歌集を編さんしたりした。そのおかげで現代の私たちも良寛さんに触れることができるのだ。
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<写真3>
塩入峠
三十歳の貞心尼が七十歳の良寛さんを訪ね通った峠。当時は難所だった。 |
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