みなさんもゴーギャンと言えば、画家そしてタヒチを連想させる人だ、ということは知っているだろう。そのゴーギャンがタヒチにいた時に、たびたび夕食会を開いていたそうだ。その時のメニューを自ら描いた珍しい画があるので、今回はそれを紹介しよう。
写真1(写真はすべて拡大してご覧ください)がその実物だが、なぜこれが発見されたかというと、その食事会に当時有力な税関士の役人が招かれたのだが、その子孫が持っていたものを復刻した、と言われている。
メニューらしく前菜やデザートと書いてあるのがわかる。面白いのは下の方に、女性が2人立っているイラストが描いてある。左は見ての通りタヒチ女性だ。唇が厚く、色も黒く現地の女性だということがわかる。右は、フランスのブルターニュの女性だ。その上の2行の文章が、「私はブルターニュ人、あなたは?」「私はタヒチ人よ」と会話している。しかもかぶっている帽子に特長があり、形はさまざまだがブルターニュの女性はこのような白い帽子をかぶっている。なぜブルターニュの女性が登場したのかというと、ゴーギャンは文明に汚れたパリのような都会が嫌いだったので、田舎を好んでいた。中でもブルターニュ地方のポンタベンという昔ながらの風習を守っている小さな村が大好きだった。そんなわけでポンタベンに三回滞在している。有名なゴッホの耳切り事件は、この三回の間に起きている。画家の仲間たちも誘って画を描きに行ったので、彼らは「ポンタベン派」と呼ばれている。写真2の地図でその場所を見て欲しい。
というわけで、このメニューにゴーギャンには懐かしいポンタベンの女性を登場させているのだ。私は2010年夏、このメニューをきっかけにポンタベンを訪れた。それが写真3だ。左側の彩り豊かな垂れ幕がゴーギャン美術館だ。ただし、ゴーギャンの画は一枚もない。館の人は、ゴーギャンの画は世界中にあるからそこで見て、という。町の中心を川が流れ、今でもよい雰囲気の町だった。また、写真4はその時のお祭りの写真で、メニューの白い帽子に似たものをおばあさんが被っている。
10/9/25
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