今回は、9月に本校で行われた、東京、ロンドン、アムステルダムの三校の学生の展示会がとても素晴らしかったので、それを紹介したい。
三校合同展というのは、東京は本校、ロンドンはロイヤルカレッジオブアート(通称RCAといういわゆる、ヨーロッパで随一の芸術大学と言われている学校)、それからミュンヘンの造形大学が、おのおの三名の学生を出し合って、各都市持ち回りで三年に一度ずつ行う展示会だ。
まず、写真1を見て欲しい(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)。夕方から展示が始まったのだが、写真1の真ん中に白く光った箱がある。この箱がどのくらい大きいのかを写真2で見て欲しい。人物と比較するとわかってもらえると思うが、長手方向が10メートルくらいある。このうっすらと写っている格子は、障子だ(写真3)。ロンドンの学生が障子に穴を開けて、ちょうど中を見ようとしているところだ。この中に学生達の作品が展示されているのだが、それが写真4のように映る。そのうちの一つが写真5で、これは本校学生の岩本さんの作品だ。焼くと固まる粘土で作った指輪で、とてもユニークで造形力がある作品だ。誰もこんな作品を作ったことがないし、ヨーロッパでも十分通用するような素晴らしい作品だ。
それにしても、この障子を使ったディスプレイは、身内ながら本当に素晴らしいと感じた。最初は作品が見えなくて、見に来た人が指で穴を開けて中を覗き込むと作品が見える、というスタイルになっていて、みんな面白がって穴を開けて覗いていた。両側から見えるので、作品と、反対側から覗いている顔などが見えて、実にユニークな展示だった。
最後にはこの展示がどうなったかというと、写真6を見て欲しい。結局、どんどん破かれて、障子の骨だけになってしまったのだ。それを全部剥がし、今度は神社のおみくじと同じように、学生達が和紙を結びつけた。このディスプレイは、鉄のフレームで骨組みを作り、それに障子のような木の枠をつけて作ったものだ。日本の文化を非常によく表し、今までにない素晴らしい展示だった。
この展示会のオープニングも写真7のように神主さんに来てもらい、執り行った。この写真は、古式に則って祝詞をあげているところで、この展示が一つの建物と考えた儀式なのだ。もてなしも、餅つきや和太鼓など、日本の文化が盛り沢山だった。
三校合同展は今回で5回になるが、今までで一番印象的な展示だった。ロンドンやミュンヘンから来た学生も、自分達にない文化に触れて、とても素晴らしい、と言ってくれたのだが、これらがすべて学生のアイデアと実行で、実現、完成し、先生の関与がほとんどなかったことが最も素晴らしいことだった。
09/10/26
(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
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