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第56号 「羊皮紙のジュエリー(1)」

まずは写真1のブレスレットを見てほしい。とても美しく不思議な雰囲気の作品だが、これはUlrike Hammの作品だ。そして素材は羊皮紙を使っている。羊皮紙といえば私たちはその名を学校の教科書等でよく聞かされた名だ。紙が発明されるまでは羊皮紙は重要な書類や聖書の記録用として使われてきた。中世の聖書などは羊皮紙によって作られているとはよく聞いたものだ。

しかし、その実物を見たり触ったりした人はごく少ない。
私は今回機会があって、この羊皮紙を使った教会の時とう書に触れることができた。写真2がそれを額装したものだ。ブレスレットに触れる前にこの話をしたい。

目でテクスチャーを見ると皮の感じがよく分かるが、はずして触ってみると皮より紙の感じに近い。文字自体は鵞ペンの手書きで(15世紀のものといわれている)実に美しいラテン語だ。全部を読み解くことはできないのだが、よく見ると縦行左から2行目はアルファベットの d から g が書いてあり、その下には a から g までの7文字が曜日を表しているようにも思える。さらに右の行にはSaintという字が上から下までに書いてあり、その次に書いてあるのは聖者の名前らしい(写真3)。写真をクリックして拡大して見てもらいたい。例えば上から4行目はSaint agatheと書いてあり、聖agatheの誕生日を表したものではないかと思われる。ちなみにこの名は現在のagate(めのう)と同じらしい。いずれにしてもこれは聖者たちの誕生日を列記してあるのではないかと思われる。

さて、ここでもう一度羊皮紙について一般的な事を書いておくと、紙という言葉を使っているが実際には動物の皮をごく薄くしたものだ。古代エジプトでは皆も知っている通りパピルス(今でも花屋さんでこの水草は鑑賞用に売られている)が現在の紙にあたるものだが、ヨーロッパでは湿気が高くパピルスは使用に問題(カビ等)があったので、動物の皮が使われた。代表的な皮が羊たっだので羊皮紙と呼ばれたが、子牛やほかの動物も使われ、それらは皮紙(ひし)を呼ばれる。英語ではヴェラム(Vellum)ペーパーともよばれ、羊皮紙はパーチメント(Parchment)と呼ばれたが、現在、両者は言葉上も両方に使われる。

次回は本題のブレスレットに入っていこう。


(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)

08/09/29

 

 

写真1
写真1

写真2
写真2

写真3
写真3

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