今月も前月に引き続き、中場信次氏のブローチを紹介しよう。
スタンドにかけてあるのが、それである(写真1)。
さて、上部の外周の青いひげの材料は何だと思うだろうか?
これはペットボトルの底の部分なのだ。裏全体(写真2)を見てみると、ペットボトルの底中央に楕円の穴を開けて、その表側にカメオがつけてある。
このペットボトルの下部をはさみで切り開き、青いひげを作っている。私も国産のペットボトルをいくつか見たが、該当するものはなかった。中場氏本人に聞いたらイタリア製のもので、何年か前にニューヨークで展示会を行なった際に、そのギャラリーのオーナーが
くれたものだそうだ。
そしてひげの先には、アルミ缶からとった半球状のものがいくつか付けてある(写真3)。
ところで、下にさがっているグリーンの植物模様(写真4)は、やはりアルミ缶から切り出し、エポキシ樹脂(二液接着剤)に日本画の顔料を混ぜて着彩している。
最後に写真2の金具の部分を見てほしい。この作品が完成した時点で「どうブローチ金具を着けるか」、大抵、はたと困ってしまう。
それを中場氏は丸のステンレスワイヤーを金槌で叩いて角ワイヤーとし、いくつかの直径サイズの線を組み合わせて使うことにより、解決している。ワイヤーがコイル状になっているところが本体との接点なのだが、丸棒をこのようにまいてもたいていは緩んできてし
まう。そこで角線にしたと本人は言っている。
また、このような一見ジャンクな作品にも、もちろん中場氏は自分のネームプレートをつけている(写真5)。当然な事だ。
一般的にはゴミと思われるものから、ロー付けも一切使わず、このようなアート性の高いものを作れるアバンギャルド(前衛的)な才能に敬服してしまう。
(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
08/06/16
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