前回に引き続き、中場信次氏の作品を具体的に紹介していこう。
写真1を見てほしい。三角形のスタンドも入れて高さは約25cmだ。もちろんテーブル・トップのかわいいオブジェでもよいが、これはブローチなのである。身につける時はこのスタンドからはずし、使わない時はこのスタンドにかけておく。
さて、細部を見ていこう。
例の言葉「神は細部に宿る」を地で言っているからだ。
まず、中心の少々黄色いプラスチックの部分(写真2)は中場氏が自分で作ったカメオ彫りの原型(前回紹介したように、カメオ自体も素晴らしい)を量産するためにシリコンゴムで型を取ったのだが、そのゴム型そのものだ。即製のカメオを使っていない点、そして泡が多く入っている点もとても楽しい。玄人的に脱泡してクリアなカメオになってしまうとつまらないかもしれない。爪もよく見ると角型のワイヤーで作られている点も見てほしい。この爪はステンレスワイヤーで、火であぶって黒くしている。丸線を金槌でたたいて角線にしているが、これは丸のままだとコイル状に巻いても緩んできてしまうからだと彼は言う。
そのまわりのアルミのような半球(写真3)はバドワイザーのアルミ缶から塗料を取って、半球状に丸めたものだ。成型のために矢坊主を使っているが、その際に使用するハンマーは金槌ではなくプラスチックなど柔らかいハンマーだ。中場氏は自作のハンマーも作って使っている。半球の頂点の部分も見てほしい。透明の丸い粒が見えるが、これはこの半球をとめるためのプラスチック製の金具なのだ。写真4のように半球の裏を見てみると「コ」の字形パーツが止まっており、中央の部分が上に伸びて半球の頂点に及び、その先をライターで焼くと、丸くなりストッパーとなっているのである。
(6月号へ続く)
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08/05/21
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