前号でアンティークの舎利塔(しゃりとう)の外観写真とそのいわれを紹介したが、原稿を書き終えてからふとこのような事に思いついた。よくお寿司屋でご飯の事を「しゃり」と表現する。何故こう言われるかというと、やはり白いご飯を仏の骨と見立てているからであるようだ。
さて、いよいよ舎利塔の中味の話に入ろう。写真1は木と銅(表面金消し)で作られ、メノウの球がいくつも入っているシンプルな舎利塔である。メノウは「石英」の一種で、石英は地球上に存在する鉱物のうち20%を占める一般的な石なのだ。実は8月の誕生石であり縞模
様が美しい「サードニックス(写真2)」は、メノウの一種である。写真3はその原石だ。日本でも各地でメノウは取れるが、商品的に採算が取れるのはブラジル産だ。福井県の若狭で取れるメノウは昔から有名で、伊勢神宮のご神宝に使われる飾り玉のメノウは今でもここで磨かれているのである。
写真4の上段の白いメノウは原石のかけらなのだが、下段にある3つの玉のうち橙色に見える物は写真3の橙色の部分が球に磨かれたものだ。これは鉄分を含んでおり、その錆び色なのである。そしてこれらがなぜきれいな丸い球となっているかというと、自然界で削れて小片となったメノウが川底の甕(かめ)のような穴に入り、水流で洗濯機のように磨かれたからだ。この穴は「ポットホール」と呼ばれ、今でも大きな滝壺の少し下流では発見する事ができる。もちろんメノウを研磨剤と一緒に容器に入れて磨けば、人工的に同じ
ものが作れる。
さて、一番楽しな話はこのメノウの球を毎日信心を込めて拝んでいると、いつか膨らみやがて2つに分かれるという点だ。私はこの話を京都・新門前にある骨董品屋さんから聞いたのだが、とても面白くこの舎利塔を存在あらしめている理由のように思ったのである。
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08/01/24
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