まずは写真1を見て欲しい。この楕円球体の物が何であるかお分かり頂けるだろうか?実はイギリスで制作された「木製の電気ソケット」で、こけしや丸盆などを制作する「木工ろくろ」で作られている。イギリスでは1890年代前半には一般家庭に電気が供給されるようになったので、このソケットもその頃のものであろう。
中を開いてみると電気製品であるという事は一目瞭然で、左右の棒がスイッチになっている(写真2)。私が初めて地方の骨董屋で見かけた時は「木製の電気製品なんてあったんだ」と驚いた。日本に限らず「木」が非常に身近な生活品の材料となっていたようだ。現在はほとんどがプラスチック製に取って変わって行ったのであるが、このような背景には「木」を使って物を作り、ろくろである程度量産できるような状態に持っていったという歴史があったからなのである。
次に写真3を見てほしい。1857年にイギリスで制作された木製の指輪掛けだ。当時、銀部分は貴金属証明として必ず刻印を打たなければならず(写真4)、1年刻みでその制作時期が分かってしまう。これもすべてのパーツを木工ろくろで制作している(写真5)。
今の指輪掛けというとほとんどがガラス製やプラスチック製などの素材であるが、最初は私たちにとても親しい「木」での材料で造られていた様だ。デザインもろくろを使い工夫を凝らしている事も分かる。
ジュエリーになじみの深い指輪掛けやソケットの様な電化製品など、どちらも木製の物がルーツになっているのである。
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07/10/23
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