今回はアメリカの彫刻家、アレキサンダー・カルダーを紹介しよう。
以外と一般の人には知られていない名前だが、「写真1なら見たことある」という人は多いだろう。金属板などの軽い素材を針金で吊る下げて動く「モビール」というもので、これを芸術的に有名にしたのがカルダーなのである。
「なんだ子供のおもちゃじゃない?」と人もいるかもしれないが、美術館で「カルダーのモビール」といえば必ず欲しい一点なのだ。入り口に大きく掛けると人目を引き、楽しい作品である。偽物も多く、本物を見分けるのは美術館のクリエーターにとっては大事なことなのだ。私の記憶だと、上下左右が1m位のもので約3000万円であった。美術館に飾れるような上から5mくらい吊るす物であれば、数億円はする。
そんな彼がジュエリーを作っている。一言でいうと針金細工だ。「なんて楽しくておおらかで自由なんだろう。しかも特別な技術はいらないんだ」というようにじっくりと見て欲しい。
写真2は真鍮のブレスレットであるが、ぐるぐるっと巻いて全部つながっている。人によってはこれを着けていると「遊びで作ったの?」となんて言う人もいるかもしれないし、「すごく楽しくていい」って褒める人もいるかもしれない。
次の作品は石を使用しているが、ワイヤーで石を縛っているというところに注目して欲しい(写真3)。もし爪留めや覆輪留めなどを用いてきちんと石をとめてしまったとしたら、とてもつまらない作品になってしまう。また、右下のところがくるくるっと唐草みたいに丸まっているところが彼のすごいところで、これがなかったら味気ない作品になってしまうだろう。
写真4は長らく米・ホイットニー美術館で飾られていた「サーカス」というシリーズの作品だ。針金を用いて団長やピエロ、ゾウなどのサーカス団員を数多く制作し(写真5・6)、ミニチュア針金サーカスを上演していたのだが、カルダーと同時期に活躍していたピカソ
もこのシリーズをとても気に入っていた。この作品を通じて彼は次第にアーティストとして認められるようになったのである。
こういった作品が紹介されているのが写真7の「CALDER INTIME」という本だ。
私がこの本をはじめて見たときは、まだ技術的なものを勉強している時期であったが「なんて自由で楽しい本なんだろう」とがつんとやられた気がしたのを思い出した。
07/09/25
(一部写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
写真はカルダー財団ホームページより引用させていただきました。
The photographs of the Calder works are cited from Calder Foundation's web site.
http://www.calder.org
水野孝彦著『世界のジュエリーアーティスト』上・下巻
美術出版社より(上下巻 各3800円)
一般書店にて好評発売中
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