今月はオットー・クンツリ氏の「ハートモチーフシリーズ」を紹介しよう。
彼は1985年から「ハート」をモチーフにした作品をいくつも作っているが、その最初の作品が高さ9.5cm、厚さ4.5cmもある大きなブローチである。(写真1)
ハートを象徴している発色のよい赤色は、BMWのコーラル(サンゴ)の赤のスプレーを使用している。また、何と言っても厚さが高さの半分に相当する大きさこそが、このブローチの特徴だ。実際に胸に着けてみるとその三次元の大きさが実感できる。
ニュージーランドのジュエリー作家、ワーウィック・フリーマンは「現代ジュエリーの作品でこんなにも大胆で迫力のあるものは見たことない」と評するほどである。
そしてこの作品を皮切りに、彼は色々なハートを作っていくこととなる。
写真2はペンダントであるが一見、ハートとの関連は見受けられない。しかし、実は紐を通す穴の形がハートになっており(写真3)、ネックレスの紐が赤であることもオットー氏の意図するところであろう。
また、写真4はハートの板を回転させて立体にしたもので「ローリングハート(rolling heart)」というタイトルが付いている。平らな一枚のハートをどんな角度で回転させるとこの立体になるか。そんなに難しくないので想像してほしい。「このハートはあなたの人生において、たった一人に向かって永遠に転がり続けるのか、それともこの人、あの人と転がっていくハートなのか」というメッセージが込められている。ちなみにこのハートはステンレス・スティールで作られていて、永遠に錆びない。
人の心や心臓を表す「ハート」はジュエリーのモチーフとしてよく取り上げられるが、独自の世界観によって作品にストーリーを持たせ、全く新しい世界を作り上げていく彼のセンスには頭がさがる。
(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
※近刊(4月1日予定)書店発売、水野孝彦著「世界のジュエリーアーティスト」より 一部抜粋
07/02/21
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