今月はオットー・クンツリ氏のスティール[steel] 作品を紹介したい。オットー氏はミュンヘンの造形大学教授でもあり、コンテンポラリージュエリーの世界的アーティストである。
まずはソリテール[Solitaire](一個石の指輪という意味である)という作品を見て頂きたい(写真1・一番上)。副題は「knuckle-dusters are girls best friends」とある。ナックル・ダスターズとは、こぶしにつける護身用の金属板(写真2)の事であり、このイラストと写真3を見てもらえれば、このソリテール[Solitaire]がなぜナックルダスターズに関連しているか分かるだろう。
次に涙[Tear]という作品を見て欲しい(写真4)。この作品もスティール製であるが、涙という最も情感あふれる人間の体液の一つを、大きな堅い鉄で美しい形に表現してしまうことはすごい。武器ともなりえるほど重く(345g)、女性の最終の武器は涙であるということも同時に表しているのかもしれない。
この作品制作時、オットー氏はアメリカにあるロードアイランド・スクール・オブ・デザインという美術大学の客員教授であり、「真珠を使わない真珠のネックレス」という課題を学生に与えた。その例としてこのネックレスを作ったのである。というのは西洋では「真珠=人魚の涙」と言われており、その真珠(=涙)を一連のネックレスに一粒づつ付けると、液体なので下端に集まってしまう。その様子をこの大きな涙で表現したというわけだ。
二点の作品共、『ジュエリー』と『スティール製の武器』とを結びつけた傑作と言える。
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06/11/15
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