今回はこんな変な、でも考えさせられるブローチを紹介したい。
写真1(画像をクリックすると拡大します)がそうなのだが、ボタンのような真円の7ミリ厚ブローチとなっている。このブローチは二層になっていて、下の円盤は鏡、上の円盤は銀を硫化させたもので一見黒い板のように見える。
円盤の直径は、75ミリとかなり大きく、これを胸に付けている人に会ったら、「何だろう」と思わずにはいられない。そして近づいていき、「この二つの穴は何だろう」と覗いてみる。すると中は鏡なので、自分の目がこちらを見返している。
これは何を意味しているのだろう。
実は、このブローチは私の親友、オットー・クンツリというドイツ、ミュンヘン造形大学のジュエリー科教授の作品なのだ。題して『Catoptric brooch(反射ブローチ)』。
きっと、彼はこんな事を言いたいのだと思う。(もちろん以下は彼が直接言った内容ではない)
『人はみな相手の心の奥底を覗いてみたいと思っている。
ハートの近くにつけた大切なジュエリーだからこそ、そこに空いている穴に、この人の真実があるに違いない。
そう思って、あなたは覗きこんでいる。
でもそこには、あなたの眼が、あなた自身を見つめている。
いくら、私の心の奥底や、真実を探し出そうとしても、それは所詮、あなたが見た私なのです。
そこにはあなたが思っている私が写っているのですが、そこに真実の私を見たと思っていませんか。』
この作品はそんな事を問いかけているような気がするのだ。
(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
06/09/21
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