写真1を見てほしい。単にビンを切ったブレスレットのように見えるが、それなら誰でも思いつく。ここに色々な意味があるからこそ、ショービンガーは、これを作品にしたのだ。
まず正面のレッテルを写真2でみよう。レッテルの中央に、Petrol(灯油) と書いてある。その下のNicht einnehmen は「飲むな」という意味だ。第二次世界大戦中は、こうやってガラスビンで灯油を移したらしい。
少しブレスレットをまわすと写真3のドクロマークが見える。おなじみ、「危険」のマークだ。 私が唸ったのが、写真4の部分。ドクロの横にあるGIFT という文字。「贈り物?」と ? が3つくらい頭の中をよぎった。発音は英語と同じギフトだが、なんとこれ、ドイツ語では「毒」という意味だそうだ。ここが一番面白い。
レッテルに目を戻すと、左下にDR.A.BRUNNER APOTHEKER ZURICHと書いてある。チューリッヒにあるアポテーク(薬局)でその名がブルンネルさん。ブルンネルは井戸という意味で、つまりチューリッヒの井戸薬局さんが売っていたものだ。きっとどこからか彼が掘り出してきたものだろう。
ショービンガーは、子供の頃から劇薬に興味があったそうだ。彼から聞いた面白いエピソードがある。子供のころ、台所の奥の方に、お母さんがアンモニアや塩酸をまとめていたのだが、そこからショービンガー少年は塩酸を、黙って持ち出したそうだ。しかし、運ぶ途中、家のすぐ近くでこぼしてしまったらしい。その瞬間、道路から白い煙がたちのぼり、彼は危険さよりもその美しさに魅せられた。彼の作品に劇薬や毒物が多いのはこのせいだ。
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06/03/15
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