ついこの間、宇宙飛行士の野口さんが宇宙へ旅立った映像は、みなさんも記憶に新しいだろう。宇宙の神秘へのあこがれは、誰もが持っているのではないだろうか。その、宇宙からやってきたものが、私の目の前にある。
そう、今回ご紹介したいのは「いん石」(英語でMeteoriteメテオライト)だ。(写真1、写真2クリックすると拡大します)
このいん石は、1947年2月12日(今から58年前)、ロシアのシホテアリニ山脈に落下したものの一つだ。写真3の地図でわかるとおり、北海道にも近い。「たくさんの火の玉が、轟音と火花をちらして深い森の中に降ってきた。飛行機雲がその道すじに延々と続いた」と記録されている(写真4)。その中でも、一番大きないん石は300kg(大人5-6人分の重さ)、また、最大直径28メートルのいん石の落ちた穴も見つかっている。空からそんなものが降ってくるとは、誰が想像できるだろう?!
写真1は「鉄いん石」といって、鉄とニッケルの合金だ。実際手にとると、急激な爆発のせいかネジレが見られ、ずっしりと重たい。実は、鉄器時代の幕開けは、この鉄いん石の使用が始まりではないかとも言われている。鉄鉱石や砂鉄から鉄を作り出すのは大変だが、鉄いん石を加工するのは、比較的たやすいからだ。
次に、写真5をご覧いただこう。「モルダバイト」だ。いん石の衝突した熱と圧力で、地球の石英質がガラス化したものだ。まさに宇宙と地球のコラボレーション! 宇宙のパワーを持ち、高いヒーリング能力をもつとも言われている。
月のクレーターは、いん石が衝突した時にできる穴だが、月には空気がないため、穴が風化されずにいつまでも残っている。地球にも月のように無数にクレーターがあったのだが、地形の変動などで多くが消えてしまった。
恐竜の絶滅は、いん石の衝突のためという説もある。10km(渋谷〜池袋くらいの距離しかない)ほどのいん石の衝突による爆発による砂塵で空がおおわれ、太陽があたらず、食べ物がなくなったためだと。この説は、メキシコのユカタン半島にいん石衝突の証拠が見つかって、ほぼ確証を得られているそうだ。地球儀で見れば、渋谷〜池袋間ほどの石なんてまことに小さいのに、地球の気候を変化させ、生物がほろんでしまうのだ。
ビッグバン直後にでき、宇宙をさまよった45億年前の物質が、自分の目の前にあるとは、なんとも夢のある話ではないか。
写真1、2:長さ6.5cm、幅3.5cm、厚み2.5cmの鉄隕石
写真3:隕石の落ちたエリア
写真4:隕石墜落の様子を描いた絵は、10周年目に切手として発売された
写真5:モルダバイト。光に透かすと、深いエメラルド色をしている
(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
05/09/16
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