Vol.19で、陶芸家の河井寛次郎氏の作品について触れました。
その後、約30年ぶりに氏の記念館(一般公開中)を訪問して、河井氏のことをもう一度みなさんにお知らせしたくなりました。(もちろん、もう亡くなられた高名な作家です。)
私たち日本人は本能的に京都という街にあこがれ、人生の中で何回となく訪れることになるようですが、“京都といったらお寺参り”と誰もが思います。私も今までかなりの数のお寺を訪問していますが、最近ふと反省したことがあります。それは、「自分が本当に寺になごみ、自分のものとして感じ取っているか」ということです。
枯山水(かれさんすい)の庭など高校生の時分から親しんでいるのに、いまだに“つくりもの”という感じがして馴染んでいないような気がします。それに、振り返れば「あの寺はよかった。もう一度行こう」と思えるのは2,3ヶ所しかありません。そんなわけで今は、よほどのことがないとお寺に行きません。
そこへいくと五条坂の河井宅には、リアルに馴染むことができる“生活美”があります。物造りの世界、雰囲気が今も漂っていて、とても懐かしい気がします。
写真1(クリックすると拡大します)は河井宅の中庭ですが、この縁側にいつまでも座っていたい気にさせてくれます。写真2はたぶん来客用の部屋で、今でも河井氏が誰かと談笑しているようです。ところどころに置いてある小物も、「さすが物造りの人の家」という感じです。写真3は木のうすをひっくり返したテーブル、写真4はなげしの木刀、写真5はすばらしい木の踏み台、写真6は焼き物窯のしめ縄。いろいろ見渡してみると新たな発見があり、そこが楽しいのです。
ところで河井氏は、物造りやデザインの世界をこんなふうに言っています。
「この世には二つの王国がある。ひとつは、自然がつくった第一の王国。そしてもうひとつは、自分の智恵と腕で新しく造りだす第二の王国。第二の王国は、枠というものがないまったく自由な世界で、そこではこの世にない物、誰も見たことがない物を、初めて造りだすことができる。第二の王国の存在を実感できることこそ、物造り、デザインの仕事をしている人の特権なのだ」。
河井寛次郎記念館
〒605 京都府京都市東山区五条坂鐘鋳町569
TEL : 075-561-3585
(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
05/06/20
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