今回は、古典的なデザインの帯止(おびどめ)を紹介します。古典的といっても、昭和初期位です(写真1)。菊と扇子をモチーフとした作品で、私たちは見ただけで日本のデザインだとわかってしまいますね。日本の国花ともいえる菊(もちろん本当の国花は桜ですが)と、生活の中の道具である扇子を組み合わせているのに、どこにも違和感がなく、地球上のどこの国を考えてもこの様なデザインは生まれていません。
扇の要(かなめ)近くに配された菊花と、その葉、そしてもっとも細かく表現された茎を見てください。この茎の細さは金属以外の素材では表現できない繊細さです。そのアップの写真(写真2)を見てください。花の厚さは最大2.5ミリ、葉の厚さは1ミリ以内に作られています。花の花弁の表現は、上から半月形のタガネを打ち込んでいるようです。
さて今度は、写真3の扇子部分を見てみましょう。右上方に向かって大きく開いていくデザインとなっていて、扇子の1つ1つの面も仕上げがとてもキレイです。しかも微妙にカーブしています。その先端を注意して見ると、色が微妙に違うのがおわかり頂けますか?写真3ではグレイのフチどりがされていますが、この部分がどういう技術で作られているか、今のところはわかりません。
写真4で扇子の裏全体を見てみましょう(特に右側の透かし部分です)。一枚板でできていることがよくわかります。この作品は夏から秋にかけての和服に合わせる帯止なのですが、現代でも使えるようにブローチに作りかえてみました。単に裏側にブローチ金具を付けてしまうのではなく、取り外し可能のブローチ金具とした所がポイントです(写真5)。こうすることによって、帯止としても使えるし、個性的なブローチとしても楽しめます。
(技術的な面については、本校講師の安藤先生にアドバイスを頂きました)
(写真をクリックすると拡大写真がご覧になれます)
04/7/13 |