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第104号 ロダンの「考える人」V

さて、私たちの仕事は金属に関わっているので、この考える人の鋳造方法についても考えてみよう。

 ジュエリーの複数鋳造(2つ以上の鋳造作品をつくること)は、金属原型をつくったらゴム型をとり、金属原型を複数のワックス原型に置き換え、それから数をつくることができる。彫刻作品の場合は、まず原型を粘土でつくり、それを石膏原型に置き換えて量産する。みんなの考える以上にプロセスはややこしい。

 そのプロセスはこのあと詳しく解説するが、粘土原型から石膏原型をつくり、そこからシリコン原型をとり、そこからまたワックス原型をつくり、これを鋳造してやっと粘土原型がブロンズ作品に置き換わる。これはワックスを使うやり方で、ロダンの生前は、砂型を使っていた。外型と中子というものをつくり、そのすき間にブロンズを流し込む砂型鋳造で行われていた。

 以上、長々とロダンの考える人について書いてきたが、私もこんな機会を与えられないとここまで調べなかっただろう。ロダンの作品のすばらしさ、本人のメンタルな面、鋳造の技術的なことなど学生諸君は学んで欲しいと思う。

 ロダンは当時、その人体表現のすばらしさから、究極の人体彫刻家と言われ、それ以上の彫刻はないと思われていた。パリに留学した高村光雲なども、帰国後、根付(小さな象牙の彫り物で、日本では非常に一般的な物だった)を見て、こんなものをつくっているから日本はダメなんだと言った、といわれている。(後年、この発言を訂正したといわれている。)


@ 粘土原型から石膏で雌型をつくる
(中の粘土は考える人の頭部と思って欲しい。もちろん本体は人物一体鋳造だ)
金属の鋳造彫刻作品は、たいてい最初は粘土で原型がつくられる。それを以下のプロセスで金属の量産作品に置き換えていく。この解説の場合、粘土作品−石膏原型−ワックス原型となる

A 中の粘土をかき出すと石膏の雌型ができる
粘土原型の空洞が残り、原型はなくなる
ロダンの作品もすべて鋳造されたわけでなく、粘土原型でロダンの死後も保存されたものもある



B 石膏雌型からまた石膏原型雄型をつくる
・ 雌型に離型材を塗り、石膏を薄い厚さで塗る
・ 雌型を合わせて、中に石膏を(ある程度の厚さの皮になるまで塗っていく。
もちろん大きく内部の空洞は残しておく)流し込む



C 厚い皮の石膏原型の完成

・ 雌型を壊してはずし、石膏原型を取り出す
もちろん、石膏原型は中が空洞の三次元立体の顔となる
※ 石膏原型が量産するための型となる(この時点で粘土原型も石膏雌型を壊してしまってないが、この厚い皮でできた石膏原型が複数つくるための原型となる)



D 石膏原型にシリコンを薄く塗る



E 石膏をシリコンの上に盛り、強度を持たせる
・ 石膏を盛る前にサイコロ状のシリコンをシリコンに埋め込んでおくと、石膏とシリコンがズレない

 

F 型をはずし、石膏原型を取り出す

 

G ワックス原型をつくる
・ シリコン雌型にワックスを塗り、必要な厚みにする
・ ワックスの厚みがブロンズの厚みとなる
※ワックス:蜜蝋や松ヤニを混ぜたもの

 

H シリコン雌型をはずし、ワックス原型を取り出す
取り出したワックス原型は、中が空洞の三次元立体の顔となっている

 

I ワックス原型に湯口、湯道を蝋でつける
ここからは皆が体験するジュエリーのワックス原型からの鋳造となる
・ 湯道はブロンズが全体に行き渡る、かつ修正しやすいところにつける
※ 湯道:溶かしたブロンズの流れる道
※ 湯口:溶かしたブロンズの注ぎ口

 

J 埋没して鋳型をつくる
・ ブリキ板等で枠をつくり、埋没材(石膏)を流し入れる



K 鋳型を焼成、脱漏する
・ 蝋が溶けて型から流れ出し、原型と同じ空洞ができる







L ブロンズで鋳造する
・ 高熱に熱し溶けたブロンズ(1080〜1180℃)を湯口より注ぎ入れる
・ 溶けたブロンズが湯道を通り、空洞に入る






M 鋳型を割り、ブロンズを取り出す




N 湯道を切り、笄を抜き、穴埋めや表面を整える




O 仕上げ





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14/11/6

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