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第5号 英国のシール
水野孝彦 主に英国のアンティーク・ジュエリーの世界にシールという分野があります。英国で1820年代頃から使われた個人の印章です。主に手紙を封印する封ろうの上に押す印の様なものです。

封ろうはふつう茶色で熱にとけ、これを封筒のふたの上にたらし、固まる前に自分の印を押すのです。一度固まってしまったら、封をあけるためにはそれを壊さねばならないので、このシールがはっきり残っていれば誰もあけていない事が明らかです。今でも由緒ある大きなお店で買い物をすると箱のリボンのひもをこの封ろうでとめてくれる所もあります。

さて、印章の形が 写真1です。下についている石に印章やアルファベットが彫ってあります。シールは1800年代にとてもはやり、それだけ種類や量も多く、アンティーク・ジュエリーの大きな分野となっています。1850年代ともなるとそれまでのフォーマル用だけではなく、遊び心をもった色々なシールをつくるようになり、手紙の相手やその時の内容、気分で様々なシールを使うようになりました。

写真2はその典型で、犬の彫物をしたガラスを中心に各種のシールをネジでとめたものです。そのいくつかを紹介すると、写真3は忘れな草で"FORGET ME NOT"の文章があり、写真4は2つのハートで"FOR EVER"など、かなりお決まりのスタイルですが、写真5の帆船は"SUCH IS LIFE"とあって、「人生は風まかせ」とふざけていたり、色々なシールを使いわけていたのでしょう。

身体にはつけないが、常時机の上にあって仕事に疲れた時や考え事をする時に手にとって遊ぶ、そんな小物を私は"デスクジュエリー"と呼んでいます。きっとこのシールは、いつも彼(所有者)の机の上にころがっていたのでしょう。みなさんもこのようなものを一つや二つ持っているのではないですか。

03/11/18
写真1

写真2

写真3

写真4

写真5
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