写真1の上部に写っている赤丸部分の枝の跡をアップで写したのが写真2だ。よく見ると、木のくずがつめてあるように見える。確かに、ここにあった木の空洞に同一の楠を粉にしたものを詰めている。表面はテーブル全体にウレタン加工してあるので何ら問題はない。もう一つ写真1の両側に年輪のとても濃い線が一本ずつ見えている。これは、この年に気候上の大きな変化があったに違いない。あるいは何かこの木の周りの環境の変化かもしれない。この楠の木は100年以上と言われている。それを伐採して板に仕上げ、10年以上乾燥している。それでも反るので、仕上がりの厚さは7cmだが、最初の板の厚さは多分10cm以上あったと思われる。それを乾燥、仕上がったところに平らに整形するので余分な厚さが必要なのだ。
さて、写真2で枝の跡、左側に白いシワシワの白い線が縮れたように入っている。これは「ちぢみ」といわれ、この木に大きな横の力が加わり、人間の筋肉が引っ張られて伸びてしまうように、木の幹で内部にひびに近い状態が生じ、その跡が残ってしまったものだ。大きな枝の周りなので、この太い枝に大きな外力(例えば、一晩中台風が吹いた)が働いたのかもしれない。
さて、木の種類が楠と書いたが、この木の一番多く知られていることは、しょうのう(樟脳)という防虫剤がとれることだ。写真3の箱が、今でも売られているものだが、洋服タンス等に入れると防虫効果が大きい。楠の木を小さなチップにして蒸して、しみ出た樹液を固めたものだ。樟脳の産地では九州の宮崎が日向(ひゅうが)樟脳として有名だ。九州には楠の巨樹が多い。巨樹と言えば、農林省の発表している日本の巨樹では10位以内の8本が楠の木だ。それも九州が多い。一番古いのは1600年以上の楠だ。
東京でも、気をつけてみると楠の木は多い。写真4は、私の家の近くの環八道路沿いに立っている調布学園前の街路樹三本だが、いずれも楠の木だ。慣れると、まず樹皮を見て、短冊のうろこ状になっているか(写真5 ※木の肌を拡大するとわかりやすいです)でわかるようになるが、一番早いのは葉を取って切ってみて、切り口の匂いを嗅いでみると、樟脳の匂いがするのですぐわかる。大きい木が多いので、なかなか葉が取れないが、そういう場合は根本に落ちている新しい葉を取ってみるといい。
写真6は楠の葉だが、葉の根本のところが三本に分かれているのが特長だ。この葉をちぎって匂いを嗅いでみると、樟脳の匂いがするのですぐ楠とわかる。防虫剤として使われるくらいだから虫が近づかない。楠の生えている地面も虫がいないので、落葉が分解されず、厚く積もっていることが多いといわれている。ところが、写真7の葉の三本の葉脈の赤い玉のところにはダニが住んでいる。これはクスダニというダニの一種なのだ。どういう理由で共生しているのか不明だが、全く不思議なことだ。
さて、話をテーブルに戻すと、私もこのテーブルを使ってみて、いかに木が人間の心を癒すか改めて感じてしまった。その意味で、次回は私の好きな木を紹介したいと思う。
参考写真:森林・林業学習館クスノキの写真より(写真7)
追伸:なんと、本校のすぐ近くで楠の木を見つけてしまった。場所は本校裏にあるコンビニエンスストアのコーナー(写真8)。葉をちぎって匂いを嗅いだので間違いない。
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