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第89号 法隆寺の百万塔 其の四
前回からの続きで、もう少し政治的背景について話そう。  

なにしろ、当時は政治と言っても具体的に何かやれるだけでなく、もっぱら仏教に頼って祈るだけだったから僧が力を得るに決まっていた(その後、結局日本の政治は力のある者、つまり武士によって牛耳られ、平清盛から徳川家康に至るまで天皇は飾り物になってしまった)。道鏡も孝謙天皇の病を治したり、数々の奇跡を起こして天皇の信頼を得、政治を動かしてしまうほどになったのだ。しかし結局は道鏡もやがてその力を失い、追放されてしまう。

写真1
<写真1>
日本の塔の美しさはその軒の反り具合にあると言われている。写真2は薬師寺東塔(奈良時代に建ててそのまま現代に残っている三重の塔)だがその軒の反り具合は建てた時の美しさだけでなく、数百年経って反りが下がってきても美しい形を保つように考えて宮大工の人々は仕事をしているといわれている。  

もちろん、この百万塔の全体的なバランスも美しいし、胡粉を塗って白く仕上げたところもよい。そういうビジュアル的な見方に加えて世界最古の印刷物(経文)が入っていることや、ろくろの仕事で量産物をつくった歴史や、聖武天皇を初めとする当時の政治的背景も加わってくる。

写真1
<写真2>
これらのことを思い起こしながら、この百万塔をながめていると感慨がひとしおだ。

最後に、この百万塔は中学や高校の日本史の資料にも載るほど有名だ、ということも後日判明した(写真3)。  
写真1
<写真3>


<参考文献>
新選日本史図表 第一学習社


11/8/25

(写真をクリックして拡大してみてください。)

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