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第79号 「スリランカの石の標本」

写真1は、セイロンの各種コランダム、普通に言うと色々な色のサファイア原石をネックレスのように並べたものだ。ケースの大きさは、約10cm×7.5cm。トップの2個はピンクスピネルの結晶で珍しい。その下が、両側パープル、ブルーグレイ、イエローサファイアの結晶で、下の中央はルビー、その両側はホワイト・サファイアだ。1個の結晶の大きさは、平均して1.5cmくらいの小さなものだ。

私はこれを、今回2010年6月のミネラルフェアでスリランカから来ているご夫婦の業者の方から買った。定価は7万円。こういうセットの原石は、日本ではなかなか買えない。原産地だからこそ、こういうセットができ、それに一個ずつは小さいので、磨いてしまうとそんなに高価な石はとれないから、こういう標本にするのはかしこいやり方だ。

石を一つひとつ見ていくと、写真2はネックレス形の最上部の石で、ピンクのスピネルだ。結晶形もきれいに整っている。写真3はそのスピネルの左下3個の石で、ブルーサファイア、ピンクサファイアの六方晶形が見られる。写真4で見てもらいたいのは、中央のイエローサファイアだ。黄色のサファイアは珍しい。

次に、写真5の中央はレッドコランダム、つまりルビーだが、硬度9にもかかわらずかなり摩耗している。他の石が結晶のエッジを保っているのとは対称的だ。かなり川を流れてきたのだろうか。

さて、これをこのようなセットにすることで、原石も生きてきくる。そうでないと一個ずつは安いものになってしまうからだ。写真6の下の三角形は、現地でジェム・トライアングルと呼ばれ、その中心がラトナプラという土地だ。地図の左端に写っているのはインド大陸で、鉄橋、アダムズ橋でつながっているのがわかる。セイロンの首都コロンボは、ジェム・トライアングルの左上くらいに位置する。

今は民族闘争で旅行は難しいが、宝石好きにとって一度は行ってみたいところだ。その現地では写真7のように、田んぼの中で石を探している。一番上の写真は、いわゆるパンニングといわれるもので、ザルの中に原石を含む石や泥を入れ、それを水の中でゆすって泥を流し、原石を探す。  

これらの資料をまとめたものが写真8だ。こういう写真を見ると、現地に行きたくなるが、それは一回で良い。良い石はここで売られることはほとんどなく、ブローカーを通じてバンコクやインドに流れ、カットされる。どんな宝石もその産地で良い石を買えることは珍しく、次の集散地である大都市の方がよい。これらの石の場合、バンコクにもっとも良い石が集まってきている。


10/8/26


(写真をクリックして拡大してみてください。

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写真1
写真1
写真2
写真2
写真3
写真3
写真4
写真4
写真4
写真5
写真4
写真6
写真4
写真7
写真4
写真8





















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