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第78号 「マチス『金魚のヘラヘラ絵』その3」

マチスの版画をもう少し専門的に突っ込んでみると、この版画が本当にマチスのものなのか、という疑問もあるかもしれない。

そのために、その画家の作品のみを集めた全集がある。それを「カタログレゾネ」という。大抵は、それを編集した人の名をとって○○のカタログレゾネという。マチスの場合、マチスのデュテュイ(人名)版画カタログレゾネという。写真1がその表紙だ。そのレゾネの中にこの版画がある。これに載っていればほとんど間違いなくマチスの作品と認められている。

その記述が写真2だ。拡大してみると写真3になる。すべてフランス語だが、一番上の2行は床の上の裸婦、腿に肘をついている、と書いてある。 3行目からはサイズについて書かれている。絵のサイズは9.2×12.5cm。その紙は唐紙(中国の紙)で紙全体のサイズは28×38cmだ。実はこの紙は二層になっていて、大きな紙の中央に唐紙(日本の和紙のような紙)を貼り付けて、ここに絵を刷っている。

紙面左側にHM(Henri-Matisse)のサインと29(1929年)の年代が入っている。その後の2と5の数字は、試し刷り2部、その後二次の試し刷りが5部、そして25部をその後刷ったと書いてある。

この画が展示された版画展は、1981年のフランス国立図書館、パリ、37番(カタログ番号)、82年フリブール。そして、この版画が所蔵されている美術館は、パリの国立図書館、ニースのマティス美術館、NYのMOMA(近代美術館)とある。

最後にこの版画の欄外に写真4のようにBon a tirerとマチスのサインがある。これは、もう印刷にまわしていいというサインなのだが、現在はもうこのような習慣はない。珍しいものだ。

10/7/25


(写真をクリックして拡大してみてください。

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写真1
写真1
写真2
写真2
写真3
写真3
写真4
写真4





















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